第二百三十七回 笑と笑と・【待機】

た行

準備をととのえて機会の来るのを待つこと。


「ねーちょっと見てみて。この棚どうかな?」


「どれどれ…この棚?」


「そうそう、リビングに収納増やしたいって言ってたじゃん。アイアンの飾りもついててさ、これオシャレでしょー?」


「まぁ確かにオシャレな棚だけど…冷静になってよく見てみ?この棚、何一つ収納してないよ?」


「え…?だって、色々しまってあるじゃん」


「そのしまってあるモンよーく見てみなよ。見られること前提でしか置いてないものだらけだから」


「…確かに言われてみれば、誰も読まないであろう洋書と、誰も火を付けないであろうキャンドルと、どうやって洗うの?っていう花瓶しか置いてない…」


「だろー。ちなみにさ、リビングの何を収納したいわけ?」


「…掃除機のノズルとか、すき間テープの残りとか…チャッカマンとか…」


「極力隠したいものだらけじゃん。だったら扉付きの棚か、収納のカゴとか追加で買わないと丸見えだよ?」


「………じゃあもういっそのこと、掃除機のノズル飾ってみる?」


「…ほう、それは新しいな…」


「フォルム的には一輪挿しよね」


「なるほどな。その辺の花を摘んで挿して、愛でながら季節を…感じ…いや無理だわ。どんな華道家でも床に叩きつけるわ」


「…ノズルもそんなつもりで生きてないよね。大人しく扉の裏で待機しててもらうわ…」



【談】
最近引っ越した家には出窓があるのですが、そんな小洒落た内装の部屋に慣れておらず、照れてしまってうまく使いこなせていません。“使い勝手がいい” という理由だけで掃除機のバッテリーを置いてしまっている状況を何とか脱したいです。

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