第三百回 笑と笑と・【据え膳】

さ行

すぐ食べられるように、食膳を整えて人の前に据えること。また、その膳。




「すまんかった。このとおり。この情けない旦那をどうか許してほしい…」



「物事のいかんによっては鉄槌が下ることになるけど…まぁ聞こうか」



「昨日残業で遅く帰ってきただろ。んでどーしても甘いもの食べたくなっちゃって…みっちゃんの買い置きのどら焼き食べちゃったんだよ」



「何だそんなこと。こないだスーパーで買ったやつでしょ?いっぱい入ってるから別にいいよ」



「ただ…俺のやつにはあんこ入ってなかったんだよ」



「え?どういうこと?」



「あの “どら焼きアソート” ってやつ、1個おまけが入ってたんだけど、それ皮だけのやつなんだよ。パッケージ見たら、 “お好きな具をはさんでお好みでどうぞ♡” って書いてあって…」



「そうなの?いや、そこまで見て買ってなかったわ…」



「俺、深夜にコソコソ嫁のどら焼き盗み食いまでしたのに皮だけって…そこは据え膳であってほしかったわ…」



「据え膳食えなかった男のドジ、か…」



【談】
考えごとをしながらどら焼きアソートをひとつ手に取って食べた後、“あれ、今食べたの何味だったんだろう?” と袋を見たらまさかの皮だけどら焼きだったことがあり、己の舌の鈍感さに愕然としたことがありました。どら焼きの皮にはあんこのワンセットでいい…。多くは望まないので、そこは幅を持たせなくてもいいかな、と個人的には思います。

コメント