第二百三十六回 笑と笑と・【今際の際】

あ行

臨終の時。死にぎわ。



「やーぁっほぉー!!!」


「…」


「…」


「…」


「…」


「…(小声)やぁっほーぉ、ゴ…グゥエ…ゲホ…ゴホ…」


「あれー?やまびこが咳き込んでる…ってちょっとユカリ!何むせてんのよ!」


「…ゴホ…いや…さっきのそばの七味が…」


「気ぃ使ってやまびこ返してくれなくていいから」


「いい…リョーコ…私の話を良く聞いて…」


「今際の際みたいに言わないでよ」


「やまびこってのはね…こんもりとした山じゃ返ってこないの…」


「え?そうなの?…ユカリがここで叫んでごらんって言うから思いっきりやまびこったんじゃん」


「まさかあんなに喉開いてくるとは思わなかったわ…」


「いやハズ。何でやらせたのよ。私の喉と精神的ダメージ返してよ」


「リョーコの喉は大丈夫…そばの七味に勝ててるから…」


「何の話よ」


「話戻るけど、やまびこはね、ゴツゴツした岩肌の山でしか返ってこないのよ。見た目綺麗な山でも、打っても響かなければ悲しいでしょ?」


「ユカリ…それって…」


「リョーコ、婚活うまくいかないって悩んでんじゃん。綺麗な山ばかりじゃなくて、色んな山に声かけてみてほしいのよ」


「ユカリ…それ伝えたくてわざわざ高尾山連れてきてくれたの?」


「山の中腹あたりで “いや、わざわざ登らなくても良くね?” って気付いたけど、景色キレイだし、リョーコと来られて良かった」


「ユカリ…ありがと。私の婚活うまくいったとしても、また二人で来ようね」


「うん。その時はとろろそばにするわ」


「喉にも優しいしね…」



【談】
このやまびこ豆知識はヒルナンデスを見ている時に入手したのですが、やまびこ=ハイキングのイメージがあり、キレイな山々だからこそやっほーボルテージも上がると思うので、ゴツゴツした岩肌に向かって叫びたくなるというベストやまびこシチュエーションに遭遇するのはなかなか難しいのでは…と思った次第です。

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