第二百六十八回 笑と笑と・【美人薄命】

は行

美しい女性は、とかく悲運であったり、短命であったりすることが多い、ということ。



「お母さん、私の命…もう長くないんでしょ?」


「何言ってるのアヤカ。必ず治る病気なのよ」


「いいの。自分のことは自分が一番よく分かってるの。お母さんが優しいからそれを黙ってることも」


「アヤカ…」


「そうね…あそこに残っている一枚の枯れ葉が散ったとき、多分私はもうこの世にいない」


「アヤカ、そんなこと言わないで…」


「あの葉っぱが私の命の灯となって………あ………」


「…あ…」


「…散っちゃった…」


「…散っちゃったわね…」


「…」


「…」


「美人薄命ごっこ、もう少しやりたかったな…」


「明日退院よ。軽い盲腸で良かったわね」


【談】
散歩のときにこのシチュエーションにぴったりな末期の枯れ葉を見つけたのですが、場所が墓地だったために “散り際に変な気ぃ使わなくて良かったね” と思った次第です。

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