第二百七十二回 笑と笑と・【より好み】

や行

好きなものばかりを選びとること。えりごのみ。




「はぁーぁ…婚活…いい男がいない…」


「アンタねぇ、高望みしすぎなのよ」


「そんなことないってば」


「じゃあ条件は?」


「全然高望みなんてしてないのよ。普通に仕事してて、普通のルックスで…それこそ星野源くらいの見た目で全然…」


「…おふざけでないよ!(パァン)」


「(向こう手で…ビンタ…)な…お姉ちゃん…何するのよ…」


「いーい。アンタねぇ、婚活界における星野源は、自動販売機におけるオレンジジュースなの」


「…オ…オレ…」


「…そう。しかも100%」


「そんなの…どこの自販機にも売って…」


「黙らっしゃい!(パァン)」


「(今度は反対側で…!)…い…痛い…」


「ないのよ。どこにでもありそうでしょ?びっくりする位ないの。ぶどうだのりんごだのはあるのに。今すぐビタミンを補給できる100%のオレンジジュースはヤクルトくらいレア自販機にしか売ってないのよ…!」


「し…知らなかった…。お姉ちゃん、私、目ぇ覚めたわ…」


「分かればいいのよ。分かれば。ちなみにアンタ、トマトジュースは好き?」


「え…あんま好きじゃない…」


「知ってる。私もそんなに。でもねぇ、トマトジュースって、意外とどこの自販機にもあるのよ。世間的には需要が高いってことね」


「そうなんだ…普段飲まないから気付かなかった…」


「自分の好きなものばっかりより好みしてないで、たまには違うジュースにもチャレンジしてみなさい」


「…分かった…今度チェリオ飲んでみるわ…」


【談】
パーキングエリアでオレンジジュースが飲みたくなり、自動販売機が立ち並ぶコーナーに行ってはみたものの、8台ある自販機全てになかったことにはさすがに驚きました。歩き疲れたときなどは体がビタミンを求めて猛烈にオレンジジュースが飲みたくなるのですが、トマトジュースの意外に高い普及率を見るにつけ、大多数の人はこれでビタミンを補給しているのか…とそこに己とのギャップを感じずにはいられません。

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