第二百九十二回 笑と笑と・【秘策】

は行

ひそかに練った策略。だれも知らないすばらしい策。




「パカパカタイプの箸箱って壊れやすいじゃん」


「脆いよね。洗ってるうちに何個壊したかとか…」


「だからうちはスライドタイプ一択なんだけど、最近のって飛び出し防止で開けても途中でとまるようになってるのよ」


「確かに。途中で引っかかる」


「使うときはそれでいいんだけど、問題は洗ったあとよ」


「洗ったあと?」


「そう。無理矢理引っこ抜いて洗うでしょ。で、戻そうとしても硬くてはめづらくて、ガッて差し込んだ瞬間手も痛ったい痛ったい」


「まぁ、構造上仕方ないのか…」


「だから最近はとある秘策を編み出した」


「ほう。聞こうか」


「両手で持ってお腹にブッ刺す。この切腹スタイルなら手も痛くない」


「…側からみたら え?覚悟のハラキリ? って思われちゃうかもね…」




【談】
旦那の弁当用に毎日洗っているので、拭く時に左手に流し台の取手にかけてあるタオルで箸箱の先端をくるみ、右手で一思いに腹にブッ刺す、という一連の流れをとてもスムーズにこなしているのですが、何らかの失策によりいざ切腹を命じられた時に「あ、ハーイ」と何の躊躇もなくこの動作ができてしまうのではないかとちょっとだけ心配です。

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