第三百五十二回 笑と笑と・【本望】

は行


本来の望み。もとから抱いている志。





「ねー。ちょっと見てこの包丁」



「え? どれどれ」



「全然切れなくなってきちゃった。トマトもこーんな」



「確かに…アタリの線しか入ってないな」



「研いだほうがいいかな…。それとも買い替え時?」



「ならさ、こないだ見た深夜の通販番組でいいやつあったよ。めっちゃ切れる包丁。あれにしようよ」



「そんなに切れるの? 」



「切れる切れる。切れすぎてさ、トマトも切られたことに気付かないんだって」



「マジか…。お前は既に死んでいる、的な…」



「そうそう。切れ味良すぎて爆ぜないから、ひでぶもない」



「散り際美しすぎでしょ」



「ひと思いに切られてトマトも本望かもな」



【談】
包丁の切れ味によって切った野菜の味が変わる、という情報をあさイチで入手したので、それ以降はトマトがあべし状態にならないよう、慎重に入刀しています。

コメント